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漢方薬局が容易に開業出来ない理由

  • 執筆者の写真: 百草園薬局
    百草園薬局
  • 6月20日
  • 読了時間: 3分

〜伝統と現代の狭間で揺れるハードル〜


漢方薬局というと、温かみのある木の棚に並ぶ薬草や、相談に耳を傾ける薬剤師の姿を想像する方も多いでしょう

しかし、このような漢方薬局を自ら開業しようとすると、想像以上に多くの壁が立ちはだかります

なぜ漢方薬局は「開きたくても簡単には開けない」のか…

その理由を、創業92年の漢方薬局の視点で紐解いてみましょう


1. 資格だけでは足りない「実力」の世界

漢方薬局を開業するには、一般的には薬剤師資格が必要です

ですが漢方薬局の場合は、ただ資格を持っているだけでは不十分

患者の体質や生活習慣を見極め、数ある生薬から最適な処方を組む「診立て」の力が問われます

これは、大学の講義や国家試験ではほとんどカバーされない領域であり、長年の現場経験や、師匠からの学びがものを言う世界です


2. 在庫リスクと生薬管理の難しさ

漢方薬局では、数百種類の生薬を取り扱うことも珍しくありません

生薬は保存方法に気を遣う上、鮮度によって効能が変化します

また一般的な薬局のような大量販売が難しいために在庫回転率が低く、経営面のリスクが非常に高いのです

仕入れ単価も高く、経験が浅いと無駄な在庫を抱えてしまいがちです


3. 顧客獲得までの長い道のり

漢方薬は効果を感じるまでにある程度の時間がかかります

さらに、カウンセリング重視のスタイルから一人あたりの対応時間が長く、回転率も低い

そのため、口コミや信頼を築くまでにはかなりの「時間」と「労力」が必要です

開業当初は顧客ゼロからのスタートとなることが多く、当座の運転資金の用意等経済的な覚悟も必要になります


4. 「漢方」の多様性と制度上の曖昧さ

現在の日本には「中医学系」「和漢系」「独自理論系」など多様な漢方の流派が存在しています

しかしそれらを統一・整理するような制度設計がなされていないため「どのやり方が正しいのか」という点で混乱が生じやすく、新規参入者は指針を見失いがちです

漢方薬局の質も開設者の思想によって大きく左右されるため、信頼構築には一層の工夫と覚悟が求められます


漢方薬局の開業は、単なるビジネスとは異なります

それは「人の体に向き合い、心を読み解く」という医療の原点に近い営み

だからこそその道を選ぶ人には、相応の覚悟と学びが求められます


漢方薬局を「簡単に開けない」のは、裏を返せばそれだけ奥が深く、価値ある仕事だということです

この先、薬剤師がもしこの道を志すならば、短期的な成功ではなく、10年、20年先を見据えた「志」と「継続」の視点を持つことが、最も大切なのかもしれません


山形の漢方薬局は百草園薬局

近所の霞城公園にて

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昭和8年創業 漢方薬専門店

百草園薬局

山形県山形市旅篭町1丁目8-6

TEL:023-622-4345

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